一日の終わりに、安らぎの香りを。眠りの時間を心地よくする香りの習慣

健康

なんとなく寝つけない、夜中にふと目が覚める。布団に入っても、頭だけが冴えてしまう。更年期に差しかかると、夜の過ごし方に気を配りたくなる方も多いものです。眠ろう眠ろうと気負うほど、かえって目が冴えてしまうこともあります。

今回は、眠りの時間を心地よくする「香りの習慣」について、小学校の養護教諭として約20年を過ごし、いまは香りと向き合う大藤チエリ先生に伺いました。

【監修】大藤チエリ先生大藤チエリ先生
お守りアロマアーティスト養成講座主宰
約20年間、小学校で養護教諭として勤務。ハンドトリートメントをきっかけに、ボランティア活動やアロマ講師業をスタート。福岡市を拠点として、ボランティア活動やアロマ講師として活動中。アロマ講師として2000人以上の生徒を育成。

自分を後回しにしてきた人へ


家族のことを優先して、自分の夜の時間はつい後回し。気づけば、ゆっくりお茶を飲む時間さえ取れていない。そんな方は少なくありません。 日中、気を張りつめたまま夜を迎えると、心だけがそわそわと落ち着かないこともあります。

「癒しを与えたい人は、まず癒されたい人。自分が満たされてフラットになるのが先」と大藤先生は話します。誰かを思いやるためにも、まずは自分がゆるむこと。一日の終わりに、ほんの少しだけ自分をねぎらう時間をつくる。その入り口として、香りはとても取り入れやすいものです。

大藤先生の原点は、約20年過ごした保健室にあります。毎日子どもたちを見るなかで、体の調子と心の状態は連動していると肌で感じてきたといいます。だからこそ、夜にほっと心をゆるめる小さな習慣を、ずっと大切にしてきました。

眠れない夜の裏には「気」の乱れがあるかもしれません

東洋医学では、心と身体は常に巡る「気(き)」のバランスによって保たれていると考えられています。大藤先生はこう語ります。「自然の営みという基準。無理にねじ曲げると心や体に不調が出る」

更年期は、女性ホルモンの変動とともに、この「気」の巡りが大きく揺らぎやすい時期でもあります。東洋医学では、エネルギーである気が上へ上へと昇りすぎてしまう「気逆(きぎゃく)」という状態が起きやすくなると言われており、これが頭に熱がこもったような冴えや、寝つきの悪さにつながることがあります。身体は疲れているのに頭だけが冴えて覚醒してしまう、あの独特な感覚の正体です。

日中、家族のために休む間もなく動き回り、気を張り詰めたまま夜を迎えると、この状態に陥りやすくなります。忙しい一日の終わりに急に「さあ眠ろう」としても、巡りが整っていなければ心は急には追いつきません。こうした揺らぎを自然なサインとして捉え、香りでアプローチしていくことが大切なのです。

香りは、おやすみ前の気分を切り替えるお守り


大藤先生のコンセプトに「香りはお守り」という言葉があります。枕元にそっと置いておけば、一日の終わりに自分を落ち着かせてくれる。そんな、心の支えのような存在です。

「香りは0.2秒で脳に届いて、心や体に直接働きかける」と先生。嗅覚には、ほかの感覚にはない特徴があります。考えるより先に、気分や感情に届きやすい。だから、眠る前に心地よい香りを取り入れると、張りつめた気持ちがふっとほどけ、おやすみ前の穏やかな切り替えができます。

「がんばって眠る」のではなく、「心地よい時間を過ごしているうちに、自然と一日が終わっていく」。香りは、そんな夜の入り口をやさしく整えてくれるのです。

おやすみ前に、好まれてきた香り

香りに「これが正解」はありません。その日の気分で、ほっとできる香りを選んでみてください。

おやすみ前のひとときに親しまれてきた香りには、いくつかの定番があります。穏やかな気持ちで過ごしたいときのラベンダー。落ち着いた雰囲気をまといたいときのシダーウッド。心を和ませてくれるフランキンセンス。親しみやすいオレンジも、緊張をふっとほぐしたいときによく選ばれます。ローマンカモミールのような、やわらかな甘さのある香りも人気です。

ただ、心地よいと感じる香りは人それぞれ。その日の体調や気分でも、ほっとできる香りは変わります。「今日はこれだな」と感じる直感を、どうか大切にしてください。香りは脳や身体に近いところで感じるものなので、選ぶときは不純物を含まない100%天然の精油(エッセンシャルオイル)を選ぶと安心です。

「好きな香りは、経験と記憶」と大藤先生。心地よいと感じる香りには、その人だけの思い出が結びついています。いくつか試しながら、自分が一番ほっとできる香りを見つけていく。その過程そのものが、夜のちいさな楽しみになります。

心地よい眠りのための、空間づくり


おやすみ前の時間を心地よくする、ささやかな工夫をいくつかご紹介します。

まず、眠る30分ほど前に、部屋の灯りを少し落としてみてください。やわらかな明かりは、穏やかな気分を後押ししてくれます。スマートフォンの画面を少し早めに手放すのも、心をゆるめるきっかけになります。

香りの取り入れ方も気軽に。寝室でディフューザーを使ったり、手のひらやティッシュに精油を一滴のせてゆっくり深呼吸したり。植物油で薄めた精油を、こめかみや首元、足の裏にやさしくなじませるのもおすすめです。湯船に精油を数滴(5滴ほどまで)落とすアロマバスも、続けやすい習慣。肌が敏感な方は、植物油などで薄めてから使ってください。

このとき意識したいのが、呼吸です。香りを楽しみながら、吸う息の2倍ほどの時間をかけて、ゆっくり吐く。この「長息」を繰り返すと、気持ちがゆったりとほどけていきます。香りを「眠るための手段」としてではなく、「今日も一日お疲れさま」と自分をねぎらう小さな儀式として取り入れてみてください。

そして、毎晩同じ時間に同じ香りを選ぶのもおすすめです。同じ香りと同じ時間を重ねるうちに、その香りが、自分にとっての心地よい合図になっていきます。最初の数日で何かが変わらなくても、焦らなくて大丈夫。続けること自体が、自分をいたわる時間になります。

香り選びに迷ったら

どの香りを選べばいいか迷う、という声もよく聞きます。大藤先生が伝える陰陽五行アロマは、スピリチュアルなものではありません。「占いと付いているけれど、これは統計学。スピのふわふわではありません」。東洋医学や心理学をベースにした、自分を知るための考え方です。

自分のタイプを知ると、今の気分の傾きや好みのクセが見えてきます。それを手がかりに香りを選ぶと、「今の自分に寄り添う香り」に出会いやすくなります。香りに正解はありませんが、自分を知る手がかりがあると、選ぶ楽しさそのものが変わってきます。

例えば、陰陽五行のタイプによって、夜に現れやすい「感情のクセ」も異なると大藤先生は言います。

あれこれ考えすぎて頭が休まらないタイプ(「土」の気質):先の不安や今日の反省がぐるぐると巡ってしまうときは、「グレープフルーツ」や「ペパーミント」、「マジョラム」や「フェンネル」などが選ばれやすいと言われています。

イライラや緊張が抜けず、身体がこわばるタイプ(「木」の気質):日中のストレスや責任感を引きずって目が冴えてしまうときは、滞った気をのびのびと巡らせてくれる「オレンジ」や「ベルガモット」などの柑橘系の香りが、緊張をふっとほぐしてくれます。

なんとなく不安で、そわそわと落ち着かないタイプ(「水」の気質):心がなかなか落ち着かない夜は、「シダーウッド」や「ゼラニウム」、「ジュニパー」「サイプレス」などのアーシーな香りが寄り添ってくれます。

「先を読む占いではなく、今の自分を客観的に見るための取扱説明書として陰陽五行を使ってほしい」という大藤先生の言葉通り、自分の状態に合わせた香りは、より深い安らぎへの案内役になってくれます。

おわりに

夜の時間は、気負わなくて大丈夫です。何かを頑張るのではなく、自分が心地よいと感じる香りをひとつ選ぶ。それだけで、一日の終わりが少しやわらかくなります。

「自分は自分でいい、とホッとするところから始まる」と大藤先生。まずは今夜、安らぎの香りでゆっくり深呼吸するところから、はじめてみませんか。

なお、眠りに関する不調が続く場合や、日常生活に影響が出ている場合は、無理をせず医療機関にご相談ください。

※本記事は、日本アロマ環境協会(JAEA)の安全基準をもとに執筆しています。なお、大藤チエリ先生が主宰する講座では、使用する精油のブランドや品質基準に応じた独自の使用方法をご紹介しており、本記事の内容と異なる場合があります。詳細は、先生の発信や講座でご確認ください。

※本記事は、香りを楽しむ生活習慣・気分転換を紹介するものです。特定の症状の治療・予防・改善を目的としたものではありません。精油は雑貨であり、医薬品ではありません。睡眠に関する不調が続く場合は医療機関にご相談ください。精油は体質により合わないことがあります。原液を直接肌につけず、パッチテストを行い、妊娠中・授乳中・持病のある方は使用前に専門家にご確認ください。

ゆうの

ライター歴23年目、3人の子どもを育てるシングルマザー。 お酒と編み物、横浜DeNAベイスターズが好き。

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