更年期を迎えた女性の多くが、急に顔や体がカーッと熱くなる「ホットフラッシュ」に悩まされています。冷たいタオルを当てる、冷たい飲み物で対処する。「その場しのぎを繰り返すうちに、いつの間にか何年もほてりと付き合い続けている」という声は少なくありません。
薬膳腸活スペシャリスト養成講座の小林基子先生に、ゆらぎ世代の女性に向けた薬膳の考え方と食材の選び方を、あらためてお伺いしてみました。

料理代行の経験を活かし、薬膳×腸活×料理を組み合わせた独自のメソッドで講座を展開。多くの卒業生が食のプロとして活躍している。
【STEP1】ほてりは「熱がある」状態ではない。「陰虚」という視点

東洋医学では、体の中に「陰(ひんやりとした潤いの力)」と「陽(温める力)」の2つがあり、そのバランスが保たれることで健康が維持されると考えます。小林先生が主宰する薬膳腸活スペシャリスト養成講座の教材では、この関係を「陰陽五行」と呼び、「バランス(中庸)を保つことで健康が守られる」と解説しています。
更年期は、加齢とともに「陰」が自然と不足していく時期です。陰が減ると相対的に陽が前面に出やすくなり、その結果としてほてりやのぼせが生じると東洋医学では捉えられています。この状態を「陰虚(いんきょ)」と呼びます。
同講座の教材には、陰虚の体質チェックシートが収録されています。「ほてり・のぼせがある」「口や喉が乾きやすい」「目や口が乾燥する」「肌が潤わない」といった症状が、陰虚のサインとして挙げられています。
ホットフラッシュも、この陰虚から生じることが多いとされます。外から冷やすことで熱感は一時的に和らいでも、根本にある「陰の不足」は補われないため、ほてりが繰り返されやすいと東洋医学では説明されています。
【STEP2】そもそも、更年期の悩みはほてりだけではなかった

「更年期の女性の悩みで本当に多いのが不眠。」
小林先生によると、ホットフラッシュに悩む方の多くが、同時に「眠れない」という問題も抱えているといいます。
東洋医学では、ほてりも不眠も、どちらも陰虚から生じることが多いと考えられています。陰が不足することで、体の熱が夜間にうまく収まらず、寝つけない・途中で目が覚める、という状態につながりやすいとされています。
つまり、更年期のほてりと不眠は「別々の問題」ではなく、同じ根っこから来ている可能性があります。この両方に同時にアプローチできる点が、食から体を整える薬膳の強みだと、先生は話します。
「まず食事から整えてみてほしい」と小林先生が伝えているのは、体の土台を内側から支えることが、ゆらぎやすい時期の体をケアし、毎日を健やかに過ごすためのはじめの一歩になると考えているからです。
56歳でゼロからオンライン起業し、等身大の主婦として多くの女性に伴走してきた小林先生自身も、家族の食や自分自身のバランスに悩んできた一人です。「人生に遅すぎるなんてことはない」と語る先生の言葉には、こうした実体験の重みがあります。
【STEP3】陰を補う食材5選

陰虚を補うのは滋陰と生津食材です。どちらも潤いが不足している「陰虚」の改善に使われています。慈陰とは、体の潤いそのものを補充することです。陰は中医学において、「血・精・津液」などの、体を潤し、冷まし、栄養する物質を指します。生津とは、津液(水分)を新しく作り出す働きの事。つまり、水分不足を改善する食材です。陰虚の初期や、夏の暑さで津液が消耗した時によく用いられます。
では、陰虚に対してどのような食材を選べばよいのでしょうか。薬膳では「涼性食材」と呼ばれる食材が、陰を補うアプローチとして活用されています。
小林先生の講座教材では、涼性・寒性の食材について「身体に潤いを与え、解毒の働きをもつ食材」と説明されています。「熱を直接冷ます」というよりも、失われた潤い=陰を内側から補うことで、体のバランスを取り戻していくというイメージです。教材では食材全体の約14%が涼性・寒性に分類されています。
先生の講座教材と発信をもとに、日常に取り入れやすい食材を5つご紹介します。
【豆腐・豆乳】
大豆製品は、体内で新たな潤いを生み出す「生津」の働きを持つとされる食材です。 日常の料理に取り入れやすく、陰虚ケアの入り口として活用しやすいと言われています。大豆由来のイソフラボンを含む点も、更年期世代に注目される理由のひとつです。冷奴や豆乳スープなど、加熱・非加熱どちらでも取り入れられます。
【ほうれん草】
体に潤いを与える「滋陰」作用があるとされる食材です。 薬膳では血を補いながら潤いも補う食材として、乾燥が気になる季節や体質の方にも活用されてきました。 おひたしや味噌汁、炒め物など、日々の食卓に取り入れやすいのも魅力です。
【卵】
卵もまた、体に潤いを与える「滋陰」食材のひとつであり、古くから親しまれてきた食材です。 ご飯に混ぜたり、卵料理に活用したりと、取り入れ方は多様です。
【冬瓜】
体内の水分バランスを整え、潤いを生み出す「生津」食材として知られています。 ほてりや乾燥が気になる季節の食養生として、薬膳では重宝されてきました。 あっさりとした味わいで、スープや煮物、あんかけなど和の料理にも合わせやすいです。
【梨】
生津の果物である梨は、体に心地よい潤いをもたらし、熱がこもったような感覚をすっきりとさせてくれると言われています。旬の秋に積極的に取り入れたい食材のひとつです。ただし食べすぎると体を冷やしすぎてしまうこともあるため、1日1/4〜1/2個程度を目安に取り入れましょう。
「毎日少しずつ」薬膳の基本は中庸

小林先生の講座教材は、薬膳の核心として「中庸(ちゅうよう)」という考え方が紹介されています。偏らず、過不足なく。食材は体に良いものであっても、摂りすぎればバランスを崩す原因になります。涼性食材も同様で、食べすぎると今度は体が冷えすぎてしまうことがあると言われています。
「日常の食事に一品加える」という感覚で、長く続けることが薬膳的なアプローチの基本です。劇的な変化を期待して大量摂取するより、毎日少しずつ取り入れることで、体のバランスが緩やかに整っていくという考え方です。先生の講座では、この「食材を足す感覚」を日常の料理に落とし込む方法が、6ヶ月かけて丁寧に学べる構成となっています。
更年期のほてりに悩んでいるとき、まず「冷やす」以外の選択肢として、食材から体の内側を整えるという視点を持ってみることが、変化のきっかけになるかもしれません。
体質を知ると、食材の選び方が変わる
薬膳では、食材の性質だけでなく「自分の体質」を知ることが、食の選び方の土台になると考えられています。同じほてりであっても、陰虚のほてりなのか、別の体質に由来するものなのかによって、取り入れるべき食材は変わってくるのです。
小林先生の講座では、「陰虚」「気虚」「血虚」「瘀血」「痰湿」など複数の体質タイプを学びます。自分の体の状態に合わせた食材の選び方を身につけていく構成になっているといいます。体質は季節や体調によっても変化するため、「今の自分の状態を読む」ことを習慣にすることが、長く無理なく続けられる食養生につながるそうです。