戸籍を抜くメリットってあるの?

生活

親との関係に悩んでいるとき、「戸籍から抜けたい」「縁を切りたい」と考えたことがある方もいるのではないでしょうか。
戸籍といえば、結婚や離婚のときに関係するものというイメージがありますが、実は「自分の意思」で戸籍を抜いて独立する方法もあります。
今回は、「戸籍を抜く」とはどういうことか、そのメリットや限界について、わかりやすくご紹介します。

そもそも「戸籍を抜く」ってどういうこと?

日本の戸籍制度では、基本的に親子などの家族はひとつの戸籍にまとめて記録されています。
この「戸籍を抜く」とは、今の戸籍から自分だけ抜け出し、新しい戸籍をつくることを指します。
たとえば、親の戸籍から独立して「自分一人だけの戸籍」をつくることも可能です。
これを「分籍」といいます。
また、結婚や離婚によって新しい戸籍をつくる場合も、「戸籍を抜く」と表現されることがあります。

戸籍を抜くにはどうすればいい?

最もシンプルな方法は、「分籍届」を提出することです。
これは18歳以上であれば誰でも可能で、役所に行って申請すれば手続きは完了します。
特別な理由や家族の同意は必要ありません。
結婚をして新しい家庭を築いた場合や、離婚をして自分だけの戸籍に戻す場合も、結果的には戸籍が移ることになります。

戸籍を抜くメリットと注意点

戸籍を抜くことには、いくつかのメリットがあります。
たとえば、親と不仲であったり、過去に虐待を受けたなどの理由から、書類上でも関わりを断ちたいと思う方にとっては、心理的な距離を置く手段になります。
また、旧姓や親の名前を見られたくない場面でも、独立した戸籍であれば人目に触れにくくなる場合があります。
しかし注意したいのは、「戸籍を抜いたからといって親子の法律関係がなくなるわけではない」という点です。
たとえば、相続や扶養義務といった法的な親子関係は、そのまま残ります。

本当に「縁を切る」ことはできるの?

よくある誤解が、「戸籍を抜けば縁が切れる」というものです。
実際には、戸籍は家族関係を記録しているに過ぎず、それ自体が法律上の親子関係を決めているわけではありません。
本当の意味で親子関係を断つには、非常に限られた手段しかありません。
たとえば、「特別養子縁組」では実親との親子関係が終了しますが、これは子ども側に関する制度であり、大人同士の親子には基本的に適用されません。
ただし、虐待やDVなど深刻な問題がある場合には、弁護士などを通じて法的に一定の距離を置くことができる可能性もあります。

相続放棄のメリット・デメリット


戸籍を抜いても親子関係は続きますが、相続については「相続放棄」という手続きで権利を放棄できます。
メリットとデメリットを理解した上で、慎重に判断しましょう。

相続放棄とは?

相続放棄とは、親が亡くなった時に、その財産を一切受け取らないことを家庭裁判所に申し立てる手続きです。
プラスの財産だけでなく、マイナスの財産(借金など)も含めて、すべての相続権を放棄することになります。
親が亡くなったことを知った日から3ヶ月以内に手続きをする必要があります。

相続放棄のメリット

借金を引き継がなくて済む
親に多額の借金がある場合、相続放棄をすることで借金を背負わずに済みます。
親の借金が財産を上回っている場合は、相続放棄が有効な選択肢となります。
借金の取り立てに悩まされることもなくなり、自分の生活を守ることができます。

相続トラブルから解放される
兄弟姉妹間での遺産分割協議に巻き込まれたくない場合、相続放棄をすることで一切の関わりを避けられます。
親との関係が悪かったり、他の相続人との関係が複雑だったりする場合に有効です。
相続放棄をすれば、遺産分割の話し合いに参加する必要もありません。

心理的な区切りがつく
虐待やネグレクトなど、親から受けた傷が深い場合、相続放棄が心理的な区切りになることがあります。
「もう関わらない」という意思を形にすることで、前に進みやすくなる人もいます。
ただし、これは気持ちの整理のためであり、法的な親子関係は続くことを理解しておきましょう。

相続放棄のデメリット

プラスの財産も受け取れない
相続放棄をすると、不動産や預貯金などのプラスの財産も一切受け取れなくなります。
一部だけ放棄して一部だけ相続するということはできません。
後から財産が見つかっても、相続放棄を撤回することは原則としてできないため、慎重な判断が必要です。

他の相続人に影響が及ぶ
自分が相続放棄をすると、次の順位の相続人に権利が移ります。
たとえば、子ども全員が相続放棄をすると、親の兄弟姉妹が相続人になる可能性があります。
借金がある場合は、親戚にまで迷惑をかけてしまうことになるため、事前に相談しておくことが大切です。

手続きに期限がある
相続放棄は、親が亡くなったことを知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てる必要があります。
この期限を過ぎると、原則として相続を承認したとみなされます。
急いで判断しなければならず、財産の調査が不十分なまま決めてしまうリスクもあります。

撤回できない
一度相続放棄をすると、原則として撤回することはできません。
後から多額の財産が見つかっても、取り戻すことはできないのです。
よほどの理由(詐欺や強迫など)がない限り、やり直しはきかないので慎重に決めましょう。

相続放棄の手続き方法

必要書類を準備する
相続放棄申述書、被相続人(親)の戸籍謄本や住民票除票、申述人(自分)の戸籍謄本などが必要です。
家庭裁判所のホームページから申述書の書式をダウンロードできます。
必要書類は家庭裁判所によって異なる場合があるため、事前に確認してくださいね。

家庭裁判所に申し立てる
被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に、相続放棄申述書と必要書類を提出します。
申立ての際には、収入印紙(800円)と郵便切手が必要です。
書類に不備がなければ、1~2週間程度で家庭裁判所から照会書が届きます。

照会書に回答する
家庭裁判所から送られてくる照会書に、相続放棄の理由や財産の状況などを記入して返送します。
正直に記入することが大切で、虚偽の記載は後々問題になる可能性があります。
わからないことがあれば、家庭裁判所に問い合わせることもできます。

相続放棄申述受理通知書を受け取る
照会書を返送した後、問題がなければ相続放棄申述受理通知書が送られてきます。
これで相続放棄の手続きは完了です。
この通知書は大切に保管し、必要に応じて債権者などに提示します。

扶養義務を免除されるケースとは


親子間には扶養義務がありますが、すべてのケースで無条件に負わなければならないわけではありません。
どのような場合に扶養義務を免除される可能性があるのか、理解しておきましょう。

扶養義務とは?

民法では、直系血族(親子、祖父母と孫など)と兄弟姉妹は、お互いに扶養する義務があるとされています。
これは、親が経済的に困窮した場合、子どもが生活費や医療費などを援助する義務があるということです。
ただし、扶養義務の程度は、自分の生活を犠牲にしてまで行う必要はなく、「自分の生活に余裕がある範囲で」とされています。

扶養義務が免除されるケース

虐待やネグレクトを受けていた場合
幼少期に親から虐待やネグレクトを受けていた場合、扶養義務を免除される可能性があります。
裁判所は、過去の親子関係を考慮して判断します。
ただし、自動的に免除されるわけではなく、親が生活保護を申請した際などに、自治体から扶養照会が来た時点で、虐待の事実を説明する必要があります。

長期間音信不通だった場合
親が子どもを置いて家を出て行ったり、長年にわたって連絡を取っていなかったりした場合も、扶養義務が免除される可能性があります。
親としての責任を果たしてこなかったという事実が重視されます。
何年間連絡がなかったか、その間に援助を求められたことがあったかなど、具体的な事情が判断材料となります。

親から相続放棄された場合
過去に親が自分の親(祖父母)の相続を放棄していた場合、その子ども(孫)も祖父母に対する扶養義務を免除される可能性があります。
親が祖父母との関係を断ったのと同様に、子どもも親との関係において扶養義務を負わないという考え方です。
ただし、これは必ずしも認められるわけではなく、個別の事情によって判断されます。

自分の生活が困窮している場合
扶養義務は、「自分の生活に余裕がある範囲で」行うものです。
自分自身が生活保護を受けていたり、借金で苦しんでいたりする場合は、扶養義務を果たせないと認められることがあります。
子どもの教育費がかかる時期や、自分が病気で働けない状況なども考慮されます。

扶養照会への対応方法

扶養照会とは?
親が生活保護を申請すると、自治体から子どもに対して「扶養照会」が届くことがあります。
これは、「あなたの親が生活保護を申請していますが、援助できますか?」という確認の通知です。
扶養照会が来たからといって、必ず援助しなければならないわけではありません。

援助できない理由を伝える
扶養照会に対しては、正直に自分の状況を説明しましょう。
「自分の生活で精一杯で援助できない」「過去に虐待を受けており関わりたくない」など、具体的な理由を記載します。
証拠となる診断書や収入証明などを添付すると、より説得力が増します。

専門家に相談する
扶養照会への対応に不安がある場合は、弁護士や行政書士などの専門家に相談しましょう。
法テラスでは、経済的に余裕がない人向けに無料の法律相談を行っています。
自治体の福祉課や生活相談窓口でも、相談に乗ってもらえることがあります。

扶養義務を巡るトラブルを避けるために

早めに自分の意思を伝える
親が元気なうちから、援助できないことを伝えておくことも一つの方法です。
突然扶養照会が来て慌てるよりも、事前に関係性を明確にしておく方が、お互いのためになることもあります。
ただし、感情的にならず、冷静に自分の状況を説明することが大切です。

記録を残しておく
虐待やネグレクトの事実、音信不通の期間など、扶養義務を免除してもらうための証拠となる記録を残しておきましょう。
診断書、警察への相談記録、日記など、客観的に証明できるものがあると有利です。
いざという時に備えて、整理して保管しておくことをおすすめします。

無理な援助はしない
扶養義務があるからといって、自分の生活を犠牲にしてまで援助する必要はありません。
無理をして援助を続けると、自分自身が経済的に困窮してしまいます。
できる範囲で、できることだけを行うという姿勢でのぞんでくださいね。

まとめ

「戸籍を抜く」ことで親との心理的な距離を保つことはできますが、法的な親子関係はそのまま続きます。
感情的に距離をとりたいときに「分籍」がひとつの選択肢になることもありますが、それで「縁が切れる」と思い込んでしまうと、後で思わぬトラブルになることも。
もし本気で関係を見直したいと考えているなら、一度、法律の専門家に相談してみるのがおすすめです。
あなた自身の心の安定と安心を第一に、大切な選択をしていきましょう。

たまご

東京都出身、ゆらぎ世代のFPウェブライター・たまごです。 FP取得、法律の勉強をしています。

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